NHKのクローズアップ現代で中国のアニメ事情が紹介されていました。
これまでクール・ジャパンの象徴とされてきた日本のマンガ・アニメで異変が起きている。
国民的マンガ雑誌の編集部には、中国人作家の作品が持ち込まれ、地上波でアニメ化される作品も。
日本の優秀なアニメーターを厚待遇で募集する中国企業も出てきている。
急速に存在感を増す中国の背景には、国をあげた国産マンガ・アニメ振興策がある。
各地でアニメーターを養成する「基地」を設立、世界に打って出るアニメや漫画を国策として育成しているのだ。
激動する日中のマンガ・アニメ制作の現場を密着ルポし、日本マンガ・アニメのこれからを見つめる。
中国は、中国共産党による一党独裁の国家体制であり、計画経済によって社会を運営しています。
1978年12月の第11期三中全会で改革開放路線を採用して以降、中国政府は計画経済から市場指向型の経済への改革を続けてきている。
この経済体制は「中国の特色を持った社会主義市場経済」と呼ばれており、中華人民共和国の経済体制は市場経済と計画経済の混合経済である。
中国のアニメやマンガの産業も、国策による投資がなされています。
中国のやり方で、合理的だと思える部分があったのでメモ。
修正が容易なコンピューターグラフィックスを駆使
中国のマンガやアニメではCGが活用されています。
来年(2020年)の公開を目指す、3DのCGアニメ「深海」。内気な性格の女の子が、不思議な世界深海に迷い込むファンタジー映画です。
活用していたのは、人間の動きを記録する「モーションキャプチャー」。実はこの施設、政府によって整備されています。国の強力な後押しで、最先端の技術をふんだんに活用できるようになっていました。クリエーターも精鋭ぞろい。
ハリウッドで活躍していた人など、中国全土から3DCGアニメ制作の精鋭を選抜しています。
CGには、日本に多い手描きとは異なるメリットがあります。目指す表現のため、スピーディーに何度も試行錯誤できるのです。
リアルをバーチャルに取り込む工夫
CGの造形は人工的で、現実味が足りない場合があります。
ロボットや絵で人間に似せると、現実の人間との違いに違和感を覚える場合があります。この現象は「不気味の谷」などと言われています。
不気味の谷現象とは、美学・芸術・心理学・生態学・ロボット工学その他多くの分野で主張される、美と心と創作に関わる心理現象である。
外見的写実に主眼を置いて描写された人間の像(立体像、平面像、電影の像などで、動作も対象とする)を、実際の人間(ヒト)が目にする時に、写実の精度が高まってゆく先のかなり高度なある一点において、好感とは正反対の違和感・恐怖感・嫌悪感・薄気味悪さ (uncanny) といった負の要素が観察者の感情に強く唐突に現れるというもので、共感度の理論上の放物線が断崖のように急降下する一点を谷に喩えて不気味の谷 (uncanny valley) という。
元は、ロボットの人間に似せた造形に対する人間の感情的反応に関して提唱された。
絵に描かれた人間像の嘘っぽさを解消するために、中国のアニメ産業では、実在の人間をよく観察して、表現を改善する試みに取り組んでいました。
密着取材で、田監督のすごさを実感する場面に出会いました。
この日、中国の映画やテレビで活躍する、11歳の天才子役を呼んでいました。微妙な感情表現をCGで表すため、その表情を観察しようというのです。主人公と、自分を助けてくれた男性キャラクターとの、別れのシーンの絵コンテ。女の子は、悲しい気持ちと感謝の気持ちが入り交じった表情を見せます。この絵コンテをもとに、CGを作ろうとしていました。
田暁鵬監督
「スタート、終わりの合図を出さないから、自分のペースで演じてください。」
クリエーターたちに、子役の表情をじっくり観察させます。
子役
「ありがとう。」
田暁鵬監督
「『ありがとう』は、軽くつぶやいて。小さな声で、心の中に思っている人に語りかけるんです。」
子役
「ありがとう…。」
田暁鵬監督
「すばらしい。」
子役
「泣いたとき、力が抜けたみたい。」
田暁鵬監督
「まさにその感覚だ。」
心を動かされた子役の表情が、CG制作の大きなヒントになりました。
産業の空洞化
国によって物価が違い、その結果労働者の人件費も違います。
中国やアジアの各国は日本と比較して人件費が安かったため、日本の製造業は中国やアジアの各国に製造をアウトソーシングしてきました。
その結果、日本国内における製造が減り、日本の産業は空洞化してきました。
国内企業の生産拠点が海外に移転することにより、当該国内産業が衰退していく現象。
1995年版「経済白書」によれば、
(1)円高による輸出の減少、
(2)輸入による国内生産の代替、
(3)直接投資(=海外生産)の増大による国内投資(=国内生産)の代替、
の3つのルートから製造業が縮小することにより産業空洞化が生じる、としている。
日本のアニメ産業も他の産業と同様に、中国への製造委託によって空洞化していく可能性があります。
中国の急成長をきっかけに、日本のアニメ産業も大きく変わり始めています。日本と中国の間では、これまで、原作は日本で、アニメ制作の一部を中国へ発注するという仕組みがありました。中国のアニメ産業が日本を支えるという構造があったのです。その関係に今、変化が起きています。
アニメ産業が集積する、中国・大連。ここで15年前に設立された、アニメ制作スタジオです。設立当初は、ほぼすべての仕事が日本の下請けでした。しかし今では、3分の2が中国向けのアニメ制作です。
スタッフは、日本の下請けだった頃の10倍に。
今、制作しているのは、オリジナル作品です。中国だけでなく、日本のアニメ市場への展開も視野に入れています。
デジタルツールの活用
中国のメリットは、国家事業としてマンガやアニメの振興ができることです。
資金が潤沢なので、最先端の技術(CG、モーションキャプチャーなど)を導入して、スピーディーに制作や試行錯誤ができます。
同じことは日本でもできるので、良い所取りをすればOKでしょう。
縦スクロールのマンガや、中国らしい表現のアニメ。私は新鮮に感じました。そこからさらに日本も刺激を受けて、もっと面白いものを、見たことがないものを、競い合いながら作ってほしいと思います。
- アナログ:手書きの良さを生かす。
- デジタル:修正や試行錯誤がすぐにできる。
それぞれの長所をいかせば、コンテンツ制作を改善していけそうですね。