浜村拓夫(・∀・)作品集

頭の中にあるイメージを表現できるデザイン力が欲しいです(><)

Learn or Die 死ぬ気で学べ

AIの開発で有名なPreferred Networks社の宣伝本を読んでみました。

仕事のモチベーションに関する考察が参考になりました。

 

 

 

目次

はじめに  コンピュータの力で実世界の課題を解決する

 

Chapter.1 【存在意義】プリファードネットワークス(PFN)とは何か …… 西川徹

 

 ソフトウェアとハードウェアが融合する時代
 挑戦するための「四つのバリュー」
 拡大する深層学習の産業応用
 「ぶつからない車」や「物をつかむロボット」の誕生
 試行錯誤の高速化 ―― 開発フレームワークを公開する理由
 自前の半導体も開発して競争力を維持
 パーソナルロボットに焦点をあてる
 「ロボットの一般化」を目指して
 いよいよパーソナルロボットの世界が来る
 深層学習が実現する「環境の抽象化」
 「お片付けロボット」の実現
 アニメの世界、スポーツの世界にも深層学習を
 パラダイムシフトにキャッチアップできる力を子供たちに

 

Chapter.2 【理想】チームで成果を最大化する …… 西川徹

 

 ずっとコンピュータが好きだった
 岡野原大輔との出会い
 プログラミングコンテストで「チーム」の力を知る
 2006年、PFIを創業
 最初に商品化した大規模全文検索エンジンはなかなか売れなかった
 通帳残高が600円になるほど無頓着だった創業期
 起業は「思い立ったときに始める」しかない
 技術者にもコミュニケーション能力が重要に
 パーティは苦手だが合宿は盛り上がる

 

Chapter.3 【情熱】何よりも自由を確保する …… 西川徹

 

 事業シフト 検索エンジンから機械学習
 ビッグデータをリアルタイムに分散学習するフレームワーク「Jubatus」開発
 時代の狭間で、積み上げたものを捨てるか否か悩む
 ビッグデータを吐き出すIoT、そしてAIによる解析の可能性に気がつく
 コンピュータの性能を上げた先の「質的変化の象徴」=深層学習
 PFN誕生
 面白いことをやらないなら生きている意味がない
 腹をくくっても「その次」に行けないモヤモヤ
 ファナックの稲葉会長と響き合う
 機械学習が最もうまく機能する領域は「ロボット」

 

Chapter.4 【価値基準】常にラーニングゾーンに身を置くために …… 岡野原大輔

 

 社員全員参加で議論し四つの行動規範を決定
 Motivation-Driven(熱意を元に)
 Learn or Die(死ぬ気で学べ)
 Proud, but Humble(誇りを持って、しかし謙虚に)
 Boldly do what no one has done before(誰もしたことがないことを大胆に為せ)

 

Chapter.5 【技術革新】深層学習の面白さ …… 岡野原大輔

 

 深層学習とは何か
 教師あり学習教師なし学習
 誤差逆伝搬法
 深層学習は何がすごいのか
 強化学習
 分散深層強化学習と自動運転
 強化学習の難しさ
 生成モデル
 深層学習の汎化能力の高さの謎
 人間の脳に学ぶ
 最低限「人間並み」の学習能力を目指す
 インターネット時代の研究開発

 

Chapter.6 【組織開発】「何をやるか」と同じだけ重要な「誰とやるか」 …… 西川徹

 

 研究開発の「手段」としてのビジネス
 エキスパート同士が理解し合える環境を作る
 採用面接では「楽しんでいるかどうか」を重視
 来てほしい人とのアポイントは最優先する
 バイアスを持たない人を求めて
 「20%ルール」と「グランドチャレンジ」を推奨
 外部と交流しない大学研究室からは新しいことは生まれない
 洒落たオフィスよりもGPUボードを選ぶ
 問題が起きたらすぐに取り掛かり、5分で解決したい
 人事の評価=経営陣の学び
 製品開発メンバーの増やし方は慎重に
 尊敬する人は口説く
 500年先を見るために

 

Chapter.7 【資本政策】9割に及ぶ失敗を「推奨」するために …… 西川徹

 

 自由を手に入れるために外部資本を受け入れる
 NTT、トヨタファナックは可能性に出資してくれた
 ズバ抜けた技術
 時間だけ取られるビジネスはしない
 失敗を推奨できる資金集めが重要
 主役になれる人が主役になる環境作りが喜び

 

Chapter.8 【未来】AIとロボット、我々が見据える未来予想図 …… 西川徹・岡野原大輔

 

 ロボットが次のコンピュータのかたちとなる
 今後は製品開発能力を引き上げていく
 パーソナルロボットへ舵を切った理由
 技術での圧倒的な差別化が必要
 コンピュータ業界のトレンドの変化にチャンスがある
 成功するとわかっている領域に興味はない
 ロボットのコストを劇的に下げる
 数十年後には人間と区別がつかないロボットができる
 ロボットが普及してなくなる仕事、なくならない仕事
 ロボットの「目」でダントツの技術を持つ
 物理的制約を超え、プログラミングを変える
 未来のスパコンは今とは全く違った姿になる
 クラウドとエッジについて生物のアーキテクチャに学ぶ
 プロトコル自体も自動生成される世界へ
 世界を変える自社製品を出す

 

おわりに  巷で言われていることを疑い、可能性の抜け穴を探せ

 

年表

 

著者紹介

www.kadokawa.co.jp

 

西川 徹(にしかわ・とおる)

1982年11月19日、東京都生まれ。2005年、IPA未踏ソフトウェア創造事業にて1テーマ採択。2006年、第30回ACM/ICPC世界大会19位。同年、Preferred Infrastructureを創業。2007年、東京大学大学院 情報理工学系研究科 修士課程 修了。2013年、情報処理学会ソフトウェアジャパンアワード受賞。2014年3月、Preferred Networksを設立、代表取締役社長に就任、現職。声優で歌手の水樹奈々さんの大ファン。

 

岡野原 大輔(おかのはら・だいすけ)

1982年4月13日、福島県生まれ。2005年、未踏ソフトウェア創造事業 スーパークリエータ認定。2006年、Preferred Infrastructureを創業。2006/2007年、NLP若手の会シンポジウム(YANS)最優秀発表賞。2007年、東京大学総長賞。2009/2010年、言語処理学会優秀発表賞。2010年、東京大学大学院 情報理工学系研究科 博士課程 修了。2014年3月、Preferred Networksを設立、取締役副社長に就任。2018年5月、代表取締役副社長に就任、現職。趣味は読書(特に歴史小説や技術論文)。

 

twitter.com

 

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出版社情報

https://www.kadokawa.co.jp/product/321807000762/

www.kadokawa.co.jp

 

書評

 

モチベーションの分析

人間の活動で目標を達成するためには、「やる気」「モチベーション」が必要になると思います。

やる気が全くない人が何かやろうとしても、行動が起こせなくて、何もできないでしょう。

(やる気が全くない人でも、バリバリ勉強や仕事ができる方法があれば教えて欲しいかも?)

 

本書で紹介されていたPFNのモットーの中に「Motivation-Drive(熱意を元に)」という標語がありました。

ここに「なるほど」と思った説明があるのでピックアップ。

 

preferred.jp

 

Motivation-Driven

熱意を元に

 

PFNの組織文化を表す上で欠かすことができないのは、メンバーのモチベーション主導である、ということです。

モチベーションがある(つまり”熱中している”)ということは、真剣に成果と向き合っている、ということを意味します。

プロジェクトの成果に意義を見出し、強いモチベーションがあれば、私たちはそれぞれのチームのメンバーの成果にも貢献しようとします。これはチームワークで成果を出す、ということとも同義です。

このカルチャーがあるからこそ、私たちは非常にフラットで、フレキシブル、かつ高いパフォーマンスを誇る組織であり続けられるのです。

 

(p.104)

Motivation-Driven(熱意を元に)

 仕事は熱意を元に熱中してできるタスクを、自分たちが自ら選び、成果と真剣に向き合うという意味だ。

 Motivation-Drivenをそのまま受け取ってしまうと、「じゃあ好きなことだけやっていればいいのか」と思うかもしれない。そうではない。モチベーションには段階がある

 基本的なモチベーションがサバイバルだ。2番目が報酬または罰。3番目が自己実現だ。2番目は外部に評価軸があるが、3番目は基本的に自分の中に評価基準があり、それを元に決める。

 我々が考えるモチベーションとは、この3番目のレイヤーだ。自分たちが「これが大事だ」と思えることで目標を達成する。そういう気持ちを持てるような仕事をしようという意味でもある。外部から「これをやってください」と言われてこなすようでは、機体を超える成果は出せない。求められ、決められた仕様に基づいて作るだけで終わってしまう。それはモチベーションがない状態だ。

 モチベーションを持つことで、様々な創意工夫が可能だし、顧客が考える以上の成果も出せるはずだ。そもそも創意工自体がとても楽しい。熱中して夢中になれるのであれば仕事をしていても楽しいし、学びも多い。会社はそういう高いモチベーションを持てる環境を作ることを目指している。

 

モチベーションを3段階に分けて考察

  • 1番目:サバイバル
  • 2番目:報酬と罰
  • 3番目:自己実現

 

2番目の「報酬と罰」は外部に評価基準がある。

3番目の「自己実現」は自分の中に評価基準がある。

 

これは、別の言葉で表現すると、

  • 「他者評価」:他人が自分をどう思っているか?
  • 「自己評価」:自分で自分をどう思っているか?

という、判定する人の違いでもある。

 

  • 「他人から良く思われたい」というタイプのプライドがある人は、「他者評価」を重視して行動することになりがちで、他人の価値観や評価基準を土台として活動する。
  • 「他人の目は気にしない」というタイプの人は、「自己評価」をもとにして活動する。

 

(「自己評価」と「他者評価」の詳細は、以下の記事を参照してください。)

hamamuratakuo.hatenablog.com

 

PFN社では、3番目の自己評価を重視している、とのこと。

やっぱ、自主的に選んで、熱中できる事柄じゃないと大きな成果は出せませんね?

 

仕事の難易度の設定(チューニング)

(p.105)

 仕事の難易度を難しすぎず簡単すぎない程度にすることも重要だ。簡単すぎる「コンフォートゾーン」と、難しすぎる「パニックゾーン」の間に、薄い「ラーニングゾーン」がある。「ラーニングゾーン」は、今よりもちょっと背伸びをすればできるタスクだ。ここが一番楽しい。簡単すぎると飽きてしまうし、つまらない。逆に難しすぎて、どう工夫してもなんともならない場合も、それはそれでモチベーションがなくなってしまう。だから難易度としては適度に難しい領域が必要になる。

 世の中の問題は、問題設定の仕方次第で難易度が変えられる。研究においても、今の技術だと天才がどう頑張っても100年早いという場合もある。一方、あとちょっと頑張れば3年や5年程度で解けるレベルの問題もある。その見極めが非常に重要だ。

 

難易度の区分

  1. コンフォートゾーン:簡単
  2. ラーニングゾーン:ちょっとだけ難しい
  3. パニックゾーン:難しい

2番目の「ラーニングゾーン」の問題設定が大事と。

 

(参考)

www.google.com

 

hrd.php.co.jp

 

f:id:hamamuratakuo:20200924174332p:plain

 

yomidr.yomiuri.co.jp

 

f:id:hamamuratakuo:20200924174705j:plain

 

 米ミシガン大学ビジネススクールノエル・ティシー教授が提唱した、能力開発に関する概念です。成長とストレスの関係には、「コンフォートゾーン」「ストレッチ(ラーニング)ゾーン」「パニックゾーン」の3領域があるという考え方を基本にしています。

 コンフォートゾーンは自分にとって快適な状態です。仕事で考えると、業務は慣れた内容で現状の技能で対応でき、ストレスもほとんどない一方で、成長はあまり期待できません。

 ラーニングゾーンは、新たな仕事に挑むなど未知の領域に入った状態です。慣れた業務をこなすよりもストレスは大きいものの、学ぶことが多く成長できます。

 ラーニングゾーンを超え、分からないことが多すぎて手に負えず、過度なストレスがかかっている状態をパニックゾーンと呼びます。判断力も思考力も低下します。負荷が大きすぎて成長は難しくなります。

 環境が変わったばかりの人は、変化が大きすぎて勝手が分からず、パニックゾーンに入ってしまうことが多いと僕は感じています。医師の世界でも、研修医になった最初の3か月で2割程度が抑うつ状態になるという研究の結果もあります。

 

en.wikipedia.org

 

 

欲張ってしまうと、ついつい難易度の高い成果を求めて、「パニックゾーン」に突っ込みがちです。

ほどほどの難易度の「ラーニングゾーン」の問題設定をすることが大事ですね。

…気を付けよう!

 

プログラミングの未来予想

本書には、コンピューターのハードウェアとソフトウェアが今後どのように発展していくのか?という予想が描かれています。

「なるほど、こんな予想もあるんですね!」という観点が参考になりました。

 

(p.238)

物理的制約を超え、プログラミングを変える

 プログラミングも変わるだろう。今のかたちのプログラミングがどれくらい残るのかはわからない。おそらく多くのプログラムが機械学習など、データからの帰納的なアプローチで作られるようになる。それにより、今まで何百万行というプログラムを書いていたプログラマーの仕事が大きく変わる。

 将来はさらにあらゆるものにコンピュータが内蔵されるだろう。だが、そのシステムの作り方が、現在のプログラムとは異なるものになる可能性は高い。もちろん残る部分もあるだろうが、全てが現状のプログラムのまま残るかどうかはわからない。

 

(p.249)

おわりに  巷で言われていることを疑い、可能性の抜け穴を探せ

 本書で述べてきたとおり、我々は様々な分野に取り組んでいることもあり、「何をやっている会社なのかよくわからない」と言われることがある。何をやっている会社なのか、ここで改めて説明を試みてみよう。

 中学生くらいが相手だと「僕らはプログラミングの方法を変えたいんだ」と言っている。

 今、プログラミングのやり方は大きく変わりつつある。ルールを書くのがプログラミングだ。これまでは人間が手でルールを書いていた。だが、これからはコンピュータが自分でルールを学習するようになる、これからの5年、10年くらいで人間はコードを書かなくなるだろう。本編でも書いたとおり、私たちは、人間がコードを書かなくてもプログラムを組めるようなシステムを作っているということになる。

 これについても以前から「将来はプログラムが仕様書から自動で生成されるようになる」と言われ続けていた。だが今後15年くらいで、今度こそ本当にできるようになると考えている。人間はプログラムを書かなくてよくなるだろう。

 ブロックを並べて繋げるような手法のことではない。言葉や身振りで、人が人に教えるような表現で「いやいや、こうなんだよ」と対話しながらロボットに動作をプログラムできるようになる。そうすれば、ほぼ全ての人間がプログラミングを当たり前のようにできるようになるだろう。そうしなといけないし、できるだろうと考えている。

 

 どうして、これまでできなかったことが、「できるようになる」と思うのか。

 私は巷で言われていることを疑うのが好きだ。

 

プログラミングのスタイル

  • 現在:ルールベース。人間が手でコードを書いて作成している。
  • 未来:学習ベース。コンピュータがデータから学習して作成する。

 

プログラムが「ルール」「指示」の羅列であるなら、それを人間が生成するのも、機械が生成するのも、どっちでもOKと。

AIが進化すれば、ルールの作成は、深層学習や強化学習などの手法でコンピュータ自身で行えるようになるはず、という予想は面白いと思いました。

 

第8章の「クラウドとエッジについて生物のアーキテクチャに学ぶ」や「プロトコル自体も自動生成される世界へ」という話も同じ発想ですね。

 

 

これらも、今までは人間が設計・実装していましたが、AIが発達すれば「学習」によって自分で勝手にやれるようになるという予想。

 

人間がコードを書くのは「AIのプログラム」を書く部分が残ると思います。

 

Amazonのレビュー

Amazonを見るときは、低評価の辛口レビューを見るようにしています。

=商品の欠点はないか?チェックするためw

 

★★☆☆☆ 内容が薄い

2020年5月10日

プリファードの歴史というより、著者の日記。立ち読みで2分で大丈夫。ものを書くということの目的が感じられない。AIを語るものはもっと哲学的でいるべきであり趣味の世界とは違う。好きなことで起業し、たまたま時代がマッチした典型的な例。哲学のない企業が停滞するのは時間の問題。

 

本書は、会社の名刺代わりの宣伝本だと思います。

取引先に会社の事業内容を説明するときのパンフレットを豪華にしたようなものでしょう。

PFN社の自画自賛になるのは当然だと思うので、その部分は差し引いて読めばOKだと思います。

で、この辛口レビューで「哲学のない企業」との評ですが、確かに考え方がちょっと薄っぺらいかな~と思う部分はありました。

「ロボットが発達すれば世の中が便利になってハッピー」→ドラえもん程度のレベルですね。

道具によって生活が便利になると、人間は怠惰にもなる、というマイナス面について考察がすっぽ抜けてるので、良いことしか言わないポジショントークであり、深みはありません。

 

 

Preferred Networks社は、頑張っている日本人の良い見本だと思うので、参考になる部分、学べる部分は多々あろうかと思います。

 

  1. モチベーション:自己評価を土台にする。
  2. 難易度の設定:ラーニングゾーン(ちょっと難しいくらい)にする。
  3. プログラミングのスタイル:ルールベースから学習ベースにして自動化を目指す。

 

本書を参考にして、IT技術を活かす方法を検討していきたいと思います。